日本の公的年金制度は、5年に一度見直されることになっており、最近では、平成6年、平成11年と年金の支給開始年齢が引き上げられるなどの改正が行われてきました。今回の平成16年の改正の柱は、「保険料負担の引き上げ」「給付水準の引き下げ」「財源の確保」の3つとなります。
(1)年金改革の柱
【保険料負担の引き上げ】
<厚生年金>
平成16年10月から、毎年0.354%ずつ引き上げられ、最終的に平成29年度に18.3%となります。
| 現在 | 13.580%(本人負担 6.790%) |
| H16.10~ | 13.934%(本人負担 6.967%) |
| H17.10~ | 14.288%(本人負担 7.144%) |
| ↓ | |
| H29年度 | 18.300%(本人負担 9.150%) |
<国民年金>
現在の、月額13,300円を平成17年4月から毎年280円づつ引き上げ、平成29年度に16,900円になります。
【給付水準の引き下げ】
<厚生年金(夫婦の基礎年金を含む)>
標準的な年金の給付額を、年金を受給し始める65歳で現役サラリーマン世帯の平均的所得の50.2%に、平成34年までに引き下げる。
65歳からの給付/現役サラリーマンの所得=(現在)59.4%⇒(平成34年)50.2%
【世帯種類別の給付水準(受給開始時)】
| | 2004年 | 2025年 |
| 夫婦の場合(夫の就労期間40年) | 年金額 | 給付水準 | 年金額 | 給付水準 |
| | 妻が専業主婦 | 23.3万円 | 59.3% | 23.7万円 | 50.2% |
| 夫婦共働き(妻も40年間就労) | 29.6万円 | 46.4% | 30.1万円 | 39.3% |
| 妻が子育てで離婚後再就職(A) | 27.4万円 | 49.6% | 27.9万円 | 42.0% |
| 妻が出産後離婚し専業主婦(B) | 24.4万円 | 56.1% | 24.8万円 | 47.5% |
| 独身の場合(就労期間40年) | 年金額 | 給付水準 | 年金額 | 給付水準 |
| | 男性 | 16.7万円 | 42.5% | 17.0万円 | 36.0% |
| 女性 | 29.9万円 | 52.7% | 13.1万円 | 44.7% |
*給付水準とは、現役世代の手取り平均賃金に対する比率。(A)の妻の通算就労は26年2ヶ月、(B)は6年9ヶ月。尚、年金額は現在価格に換算(厚生労働省試算)
【財源の確保】
年金は徴収した保険料で不足する部分を、国庫負担で支えており、その水準を現在の「3分の1」を平成21年度までに「2分の1」に高めることになります。その財源は消費税の引き上げが検討されているようです。
(2)年金改革で負担と給付はどう変わるか
わが国の公的年金は、現役で働く世代が高齢者世代を支えるという、「世代間扶養」の考え方に基づいています。つまり、年金給付に必要な費用を現役世代からの保険料で賄っていくしくみが採用されています。しかし、現在少子高齢化が急速に進展していくなかで、現役世代からの保険料収入が減り、年金財政は非常に厳しいものとなっています。もし、年金の給付額をこのままの水準で維持しようとすれば、現役世代の保険料は厚生年金なら20%以上、国民年金についても2万円以上に上昇すると試算されています。これでは現役世代の負担があまりにも重過ぎるということで、今回の改正では保険料を段階的に引き上げて一定の水準で固定するという「保険料固定方式」が導入されることになったのです。
それでは、給付額のほうはどう変わるのでしょうか?これまで年金額は、一人当りの賃金の伸び(賃金スライド)や物価の伸び(物価スライド)に応じて改定されてきました。しかし、今回の改定では、従来の賃金スライドや物価スライドだけでなく、給付自体の伸びを抑えるために、保険料を負担している現役世代(被保険者)の減少と年金をもらう高齢者世代の増加(平均余命の伸長)を考慮して給付水準を自動的に調整する方式が採用されることになりました。これを「マクロ経済スライド」といいます。このマクロ経済スライドによる給付の自動抑制は、一人当りの賃金や物価が上昇する場合に行われ、下落する場合は行われません。また、スライド調整後の年金改定率がマイナスになってしまう場合は、前年度の年金額を下回らないように調整されます。この調整は給付の負担の均衡を取ることができる見通しが立つまで行われることになっています。